魔女の雫

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【解説】シンガポールでの事故【異宗教への誤解と身近な恐怖】

今週のお題「怖い話」

djellaba

今回はシンガポールでの事故」を紹介します。

こちらのお話はこの動画で紹介しています。

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これはシンガポールで実際にあった話です。もうずいぶん前のことですが、ある女性がお見合いで知り合った男性と結婚し、旦那さんと一緒にシンガポールへ赴任することになりました。 

旦那さんは有名大学出身で大手商社に勤めるいわゆるエリートサラリーマンで、奥さんは周囲からずいぶんとうらやましがられ、結婚生活はとても幸せでした。 

シンガポールはとてもきれいな上に都会的な街で、旦那さんの収入は世間の何倍にも相当するため、ふたりは何一つ不自由のない生活を送っていました。住むところは高級コンドミニアムだったのですが公共交通機関は混雑するため、移動は旦那さんの車を使うことがほとんどでした。 

ある時旦那さんが奥さんに言いました。「君も国際免許を取って運転した方がいいんじゃないかな。 僕がいつも家の用事をできるわけじゃないし、君が運転できれば買い物にも便利だと思うんだ。」 奥さんは日本の運転免許を持っていたので国際免許証を申請し、ほどなくシンガポールの街を一人で運転できるようになりました。 

そうしてしばらく経った時の事。住宅街を普通に走っていた奥さんの車の前に、物陰からいきなり一人の子供が飛び出して来ました。気が付いてブレーキを踏んだものの間に合わず、男の子は車に衝突されたはずみで仰向けに転倒。そのまま動かなくなってしまいました。ブレーキの音を聞いて家から男の子の家族が飛び出して来ました。色が少し浅黒いマレー系と思われる男性で、どうやら男の子の父親のようでした。男性は知らない言葉で必死に子供へ話しかけていましたが、子供の反応がないのは明らかでした。 

奥さんは大変なことをしてしまったと思って手が震えだしましたが、勇気をふるって車の外に出ると、父親に向かって英語で「アイムソーリー」と話しかけました。そしてこれが連絡先です、と住所を書いたメモを差し出しました。 父親はものすごい形相で奥さんをにらみつけると、「この子が死んだら私はお前を絶対に許さない!お前の子供を同じ目にあわせてやるからここに連れてこい!」と大声を上げました。怖くなった奥さんはどうしたら良いか分からず、もう一度「アイムソーリー」と言い残し、車に乗ってその場を離れてしまいました。 

奥さんが夫に一部始終を話した数日後、シンガポールの警察が自宅にやってきました。警察の話から男の子は救急車で病院へ運ばれたものの間に合わずに命を落としたこと、父親は地元の有力者であること、またイスラム教徒でもあり、「目には目を」との教えに従って夫婦の子供への復讐を望んでいることを知らされました。奥さんは目の前が真っ暗になりましたが、自分たちに子供はいない、夫と相談させてほしいと警察に訴え、警察官はその場から引き上げました。 

翌日仕事から戻った夫は深刻な顔で、死んだ男の子の父親はシンガポールではかなりの影響力を持つ人物だと奥さんに伝え、僕が対策を考えるからもしまた警察が来たら君はおとなしく従ってほしいと言うのでした。 

そして翌日、本当に警察がやってきました。今回彼らは令状を携えており、奥さんは同行を求められ、そのまま警察に拘留されてしまったのです。その後1日経ち2日経ち、1週間が経っても夫からも夫の会社からもなんの連絡もありませんでした。 


いつ終わるともなく拘留が続く中2週間位たったころ、ひとりの日本人が奥さんを訪ねてきました。面会室で会った男は日本大使館の者だと名乗り、とても言いにくそうにこう言いました。先方は奥さんの無期懲役を望んでいます 大使館としては最善を尽くしたのですが、なにしろ相手が相手でどうしようもないのです。でもどうか最後まで希望を失わなず、気を確かに持って下さい。 

奥さんは何を言われているのか分からず、「夫は-夫は何と言っているのですか?」と尋ねました。すると大使館員は言いました。「旦那さんは離婚届を出されました。もうシンガポールを離れられましたよ。」

 救いようのない悲しい話でもあります。

この話はティーブンキングの「痩せる男」に似ていますよね。

あちらもネイティブアメリカンとの事故で、

息子を奪われた父が呪いをかけるというものでした。

今回はムスリムの親子が被害者ですが、

ハンムラビ法典を復讐の理由にあげていますね。

これは少し変な話です。

ハンムラビ法典イスラム教だけではなく、

その源流のユダヤ教キリスト教にも影響を与えた法典ですが、

ムスリムどちらかというと、ムハンマド法典に従うからです。

ムハンマド法典は聖書に近い内容を教えとしているので、

復讐についての正当性を謳ってはいません

(ハンムラビ法も復讐を肯定するものではありませんが)

近年のテロや過激派の動きで、作者が勘違いしたのかもしれませんし

実際にこういうムスリムの方がいるのかはわかりませんが、

私はどちらかというと

旦那さんが一番怖い

と思ったので、この話を採用しました。

旦那さんはもしかして奥さんと別れたかった…?

免許を取ることを勧めたのは…

と考えたほうが、より嫌な話になって楽しめそうです。

ムスリムに関しては話半分で、

身近な人間が一番怖い、と楽しんだほうがよさそうです。

 

こちらのお話はこの動画で紹介しています。

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