今週のお題「怖い話」
この記事では「東の風」という話を紹介します。
動画はこちら。
私は現在16歳で、覚えているかぎり、私の家族はいつも友人と週末の旅行として、田舎や海岸に行くことにしており、2年前の十月の休日に、私たちはアデレード・ヒルズにあるウッドハウス・ホームステッドに出かけました。私は小さい頃から古い建物が大好きでしたが、この家に着いて、玄関に入った途端、なにか少し緊張感がありました。屋敷は2階建ての建物で、上の階にはたくさんの部屋があり、大きな台所と小部屋がありました。最初の友人が到着する前までの屋敷の中は暗く、私はまさに動いている影に入り込んでしまったかのようでした。幸いにも、他の家族が到着すると、家の中は階下の大人たちのおしゃべりと、階段を駆け上がったり降りたりする子どもたちの笑い声でいっぱいになりました。
友達のメルと私は、2階に彼女の家族が使う部屋の掃除や片付けをしていましたが、子供たちは皆階下におり、暖炉の周りで語られる幽霊の話に喜んでいました。私は腕いっぱいのバッグを持って2階の部屋に上がっていきましたが、メルは母親にやっぱりヘアドライヤーを持ってくるべきだった言いに行ってしまいます。階段を上ってみるとなにか寒気がしたので、誰かが窓を開けっ放しにしたのかと思い、私はふと立ち止まって腰の辺りに巻いていたセーターを着ました。私は再びバッグを手に取り、角を回ってメルの部屋の開いたドアに向かって進んでいきます。その窓の近くで、私は女性を見ました。彼女は白く透き通っているわけではありませんが、病気にかかっているときのように青ざめていたので、私はなぜか彼女に声をかけました。彼女は振り返って私を見ると、なんと窓から出て行ったのです。もちろん窓は閉まっていました。私はびっくりして、バッグをホールに落とし、階段を駆け下りましたが、今見たことを誰にも言葉では説明できそうにありませんでした。
翌朝、眠れない夜を過ごした後、私は服を着て、玄関ホールまで歩いて行き、玄関のすぐ内側のテーブルの上でこのホームステッドに訪れた人たちが書く、ゲストブックを開きました。その中には、1800年後半にあった自殺についての記述がありました。この屋敷を所有していた男は、嫉妬する新妻に東の窓から押し出されていたのです。男は街に愛人がいました。その後若い妻は最愛の人の後を追って窓から身を投げたそう。私は昨日見た女性が誰であったのか、気づきました。
ホームステッドは少し訳しにくいのですが、
日本でいう「青年の家」みたいな感じのところでしょうか。
民間のコテージやキャンプ場ほどサービスはよくないが、
料金が安く、使い勝手はいい、みたいな感じのところです。
今回の霊は、特に投稿者に何かをすることはありません。
悲しい過去を持っている、ということは最後にわかりますが、
怨念や呪いの類で人を襲う存在ではないようです。
俗にいう「地縛霊」という種類になるんでしょうか。
こちらの話を採用したのは、とにかく文の美しさから。
個人的に、美しい物語は行間から風が吹いてくるもの、と思っています。
激しい風と穏やかな風に揺蕩う、霊の悲しみに惹かれたのです。
こちらのお話はこの動画で紹介しています。