魔女の雫

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悪魔?魔女?(メキシコ)

witch

悪魔?魔女?

私の母は夏休み中に私と兄弟を連れて、母の故郷であるメキシコに連れて行ってくれていました。私が12歳の頃、メキシコのの母の実家につくとすぐ、隣人からおかしなことが起こっているから、あまり家の外を出ないように、と忠告されました。

 

どうやら、通りを挟んだ家に住んでいる16才の女の子が原因の様。私の祖母に聞くと、祖母は「彼女の中には悪魔がいる」というのです。彼女は最初は誰か女の子がささやく声が聞こえるということを訴え、どこでも女の子の足音を聞こえるのだ、と言い出すようになったのです。それから彼女は食べることも眠ることもしなくなったばかりか、毎朝彼女の体全体に傷やあざができるようになってしまったのです。司祭が呼ばれ、家に数回悪魔祓いの儀式を行ったのですが、不思議な現象は止まらなかったようです。だんだん彼女に暴力的で危険な行動がみられるようになったので、彼女の両親は彼女を恐れ、ほかの子供たちを祖父母の家に避難させることになりました。町の人の中にも、彼女の家の前を歩いたときに、何か嫌な雰囲気を感じる人や、影を見たり奇妙な音を聞いたりする人がいると、祖母は私に教えてくれました。

 

私のいとこはこの家の近くを歩くのが怖かったので、何か買いに行くときも反対の方向に行ってから遠回りをしているそうです。

Witch broom

ある朝、私は夜の間に通りの向こう側で何が起こったのかを話している大人たちの声で目を覚ましました。夜の間に少女の家の壁に、血によく似た大きな汚れが一晩で現れたのです。大人たちはは汚れを洗い、壁を塗りなおしたのですが、夜になるとまた汚れが現れてしまうのです。大人たちは司祭を呼びに行き、もう一度汚れを掃除して祈り、司祭に悪魔祓いとして、壁に聖水をかけてもらっていました。すると朝になると染みが消えていたのです。町中の人々は集まり、恐怖におびえながら一晩中神に祈っていたそうです。

 

私のいとこや兄弟、そして私も、もちろんその家に近づかないようにきつく言い含められていましたが、子供の私たちはどうしても壁の血痕を見に行きたい、そこで私たちは集まっている大人たちの後ろからこっそりと、この家を見に行こうとしたのです。

 

大人たちがたくさん家の前にいましたが、みんな気味悪がって入り口の近くにいるばかりで、誰も中に入ろうとはしていませんでした。しかし近づくと、彼女が痛みに耐え切れず叫んでいる悲鳴や、うなるような音が聞こえました。大人たちは皆一斉にロザリオを手に祈っていましたが、彼女の泣き叫ぶ声はやまず、だんだんと助けを求める声へと変わりましたた。しかしまた彼女は大きく叫び始め、うなるのです。この時私たちはこの状況にすっかりおびえていましたが、やはりどうしても見たい、という好奇心が抑えられなかったのです。必死で腕をつかんで引き戻そうとする妹を振り切りながら、私たちはこっそり家の中に入っていきました。あぁ私は見たものは決して忘れないでしょう。

Rope

家の手すりに少女がロープで縛られていました。彼女はほとんど皮膚と骨のようにやせ衰えていたのです。私にショックを受け、ひどくあえぎました。すると一瞬、彼女が私の方向を向いたかのように見えました。彼女は私をまっすぐ見つめ、微笑んでいるようでした。すると誰かが私を強く引っ張り、私はバランスを崩しながら家から引きずりだされました。祖母でした。祖母が見たことがないほど激しく怒りました。私は祖母に怒られながら、彼女のことを考えていました。彼女はよくなっているのではないか、と思ったのです。

 

数日後、私たちはアメリカに帰ると、後から彼女が元気になったと聞きました。毎日家に来る司祭が悪魔祓いをしているのか、町の人たちが祈っているのかは分かりませんが、悪魔を追い払うため、魔女(ブルジョ)も召喚されたそうです。司祭によると、これは悪魔のようなものではなく、魔術や黒魔術の非常に強力なものだというものでした。どうやら、彼女は誰かから嫉妬されていたようです。彼女は良くなった後、アメリカの親戚と暮らすために引っ越しました。

 

私は彼女になにがおこったのか、彼女がどうして良くなったのかはわかりません。ただ彼女が叫んでいた声は今まで聞いたことがないような恐ろしいものだった、ということです。あれから何年も経ちましたが、今でも私は彼女の顔と笑顔を覚えています。