魔女の雫

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【解説】おばあちゃんは死神を見る【メキシコの死神とは】

今回は「おばあちゃんは死神を見る」について。

こちらの動画で紹介しています。

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では、以下がお話です。

私の家族は超常現象に敏感な家系のようで、特に敏感なのは私の祖母でした。そこで今回はおばあちゃんが私に話してくれたお話の一つを紹介します。

 

おばあちゃんは腎障害にかかってしまい、気づいた時にはかなり進行した状態でした。おばあちゃんは海外に住んでいたので、私たちも見過ごしてしまっていたのです。おばあちゃんがアメリカに来た時には、腎障害がかなり進行してしまっていたので、入ることになりました。おばあちゃんは本当に状態が悪く、ほとんど寝たきりでした。

 

集中治療室に数か月間入院させることにしており、病院では看護師が昼夜を問わずさまざまな検査をし、さまざまな薬を投与してくれていました。しかしおばあちゃんは英語を話せないため、あまり看護師とスムーズに会話をすることができず、一人ぼっちになってしまいがちなので、私や家族はなるべくおばあちゃんと夜を一緒に過ごすようにしました。

 

私たちは一人ずつ順番におばあちゃんのところに行っていましたが、おばあちゃんの面倒を見た時に必ず奇妙な出来事が起きるのです。

 

最初は私のいとこDでした。Dは夜の病院が不気味なので、おばあちゃんの部屋の外にある小さな待合室に座って、おばあちゃんを見ていました。部屋のドアを開けたままにしているので、何かおばあちゃんにあってもすぐに見に行けるからです。この夜、おばあちゃんは痛みや不快感があるらしく、もぞもぞと動いていたので、Dは少し不安に感じていたようです。しかし実際見に行ってみると、おばあちゃんはぐっすりと眠っているようでした。

 

そこでDは待合室からおばあちゃんに、気分転換に上に行ってもいいかどうか聞いてみると、おばあちゃんは急にはっきりと目を覚まして、大丈夫だと答えたのです。寝たきりのおばあちゃんがいきなり大きな声を出したのでDはびっくりしました。するとさらにおばあちゃんは自分で起き上がって、部屋の隅に行こうとするのです。しかも何かぶつぶつと部屋の隅に向かって話しかけながら。

 

突然冷たい突風が病院内を駆け抜けていきました。病院はとても寒かったので、Dはおばあちゃんに何か掛けてあげようとそばに行くと、おばあちゃんはぶつぶつ話をするのをやめたのですが、とても不安げで、かなり激しい呼吸になっていました。気になったDはさっきおばあちゃんが話しかけていた部屋の隅を見ましたが、もちろんそこには何もありませんでした。

 

Dはおばあちゃんに何の話をしていたのかと尋ねると、おばあちゃんは部屋の隅に、瞳孔のない、真っ黒な肌と大きな黒い目をした背の高い女性が現れたと答えました。また、片手に長い槍のようなものを持っており、もう片手には本を片手に持っていた、と。本は非常に古いもので、黒一色の表紙には文字やタイトルがなかったと言うのです。

 

Dは、おばあちゃんがぶつぶつ何を言っているのかわからなかったらしいのですが、なんとなく単語だけ断片的に覚えていました。私がこれをDから聞き、つなぎ合わせてみると、あるスペイン語の言葉になりました。「ポーはノー・ミー・リーベス、ノー・エストイ・リスタ、ポーファーバー、トダビア・ノー」これは「私を連れて行かないで、私はまだ準備ができていない。」

 

Dはおばあちゃんを横にして、震えながら見守り続けましたが、おばあちゃんは何度も立ち上がって隅に行き「私から離れて、私はまだ行かない」と、繰り返し見えない誰かに言い続けていました。

 

冷たい風が吹き抜ける病室の中で、おばあちゃんは死神と話していたのでしょうか。私が気になったのは死神の姿が骸骨のような姿ではなく、ほとんど生きているような姿の女性であったということです。

 では見ていきましょう。

死神

死神といえば、

death

やはりこの姿ですね。

  • 黒マント
  • ガイコツ

が必須アイテムです。

とはいえ日本人には見慣れない姿。

なぜ西洋ではこの姿なのでしょうか。

死神のルーツ

ざっくりいうと死神のルーツは

「死のイメージを持つから」

「宗教観から」

来ているものです。

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こちらはブリューゲルの「死の勝利」。

病や飢えによる死が身近であった中世ヨーロッパでの様子を、

寓話的に描いたものです。

ガイコツがいますね。

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ガイコツが直接人を襲うし、

軍団になって押し寄せてきています。

こんな感じで、

死=骨になること=ガイコツ

の流れから、死神の姿もガイコツとされたのでしょう。

中南米でのガイコツ

今回登場するおばあちゃんは、スペイン語を話す人です。

アメリカのお話なので、もしかしたらメキシコかもしれませんし、

スペインからかもしれませんが、

中南米ではガイコツのとらえ方が違うようです。

死者の日

死者の日とは主にラテンアメリカイベリア半島,及びカリブ海諸国の

イベロアメリカ諸国で行われる祭り。

ディズニー映画「リメンバー・ミー」でも題材になりました。

これはもともと祖先のガイコツを

身近なところに飾っておいた風習から始まった

と言われています。

キリスト教圏の文化ではなく、

アステカから伝わる土着の信仰からのようです。

古代からの信仰では生まれ変わりが信じられていたので、

ガイコツは忌避するものではなく、

次のステップへと進む、晴れがましい象徴だったんですね。

メキシコの死神

メキシコの死神も実はガイコツです。

「サンタ・ムエルテ」という祭りが開かれており、

この時に登場するガイコツは

女性でローブをまとい、鎌を持っていますが、

こちらもどちらかというと死の呪いではなく、

生まれ変わりと生を祝うお祭り。

(生贄を捧げることもあったようで、カソリックからは異端とされています)

このサンタ・ムエルテに向かって、人々は様々な願い事を捧げるそうなので、

やっぱり死神のイメージとは程遠いですね。

 

おばあちゃんが見た死神は、

生きている女性のようであった

とのことですから、

スペイン系のおばあちゃんのところに来る死神の姿は

私たちの知っている死神とは違ったのですね。

 

このお話はこちらの動画で紹介しています。

youtu.be

ぜひご覧くださいませ。