魔女の雫

世界の怖い話を紹介する怪談ブログです。 紹介しているお話は全て実話。眠れない長い夜にでもお楽しみください。またあなたの体験した怖い話を募集しています。投稿はwitch-shizuku@gmail.comまで。

闇のマント(オーストラリア)

demons

闇のマント

これは1960年で、私は3歳でした。幼すぎるから正確には覚えていないのでは?と言う人もいますが、私はこの出来事が起こった夜をはっきりと覚えており、忘れることなどできない記憶なのです。

 

私の父と妹は質の悪いウイルスで入院しており、特に父は状態が悪く、明日どうなるかわからない状態です。私も感染していたのですが、比較的軽症で済んだため、入院はしませんでした。

 

その夜、私は忙しくて不機嫌そうな母に寝かしつけられたので、なかなか寝付けず、暗闇の中、ベッドに横たわっていました。窓から冷たい月光が差し込んでいるのを見ていると、誰かが私の部屋にいるのを感じました。しかし先ほど機嫌の悪かった母をおもいだすと、怖くて母に声はかけられません。すると彼が現れ、私の真上に立ち、私を見おろしているのです。彼は黒いマントを着ていましたが、フードをかぶっていなかったので、顔をはっきりと見ることができました。彼は茶色のボサボサした髪で、鷹のような高い鼻と黒い瞳で、私の魂に入り込んで来るように見つめているのです。暗かったので彼の外見についてこれ以上詳しく説明するのは難しいのですが、私が今まで見たことがないほど不気味な容貌で、明らかに私に敵意を持っていることだけはわかりました。

Inner Demon

彼は見つめるばかりで何も話しません。私は初めて冷や汗をかきました。しばらくの間、彼の目から私は離れることができませんでした。そして彼から自分を守らなければと思い、思い切って毛布を頭の上に引き上げ、強く目をつむりました。目をつむっていても、まだ彼がここにいるのはわかります。息が詰まるまで毛布をかぶっていたのですが、ついに目を開けてしまいました。すると、私の部屋にはすっかり何もいなくなってしまっていたのです。

 

私は翌朝このことを母に話し、彼は「モンスター」だと言ったのですが、母は私が「ふざけた子供なりの妄想」のことを大げさに言っているだけ、と、ただ私にイライラしただけでした。20年後、私が再び母にこの出来事を言うと、母は「それは悪魔に違いない」というのです。

 

悪魔でもモンスターでも、私は長い人生の間で、あの恐ろしい彼の姿を忘れたことはありません。