魔女の雫

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ビクトリア様式の家(アメリカ)

ビクトリア様式の家

Victoria Theatre

1987年、私は4人のルームメイトとアトランタの家に1年ほど住んでいました。私たちはその間、のちにあれは幽霊だったのでは?と思うような経験を何度か体験しました。

 

私たちが借りていた家はアトランタ北軍によって焼き払われ、破壊された南北戦争直後に建てられた100年以上前のものでした。

 

家はインマンパークでも有名なアトランタのある地域にあり、古いビクトリア様式の美しい家でした。私たちは皆20代と若く、この地でそれぞれの仕事を始めようと意気込んでいたので、2階建てで、5つものベッドルームがあり、さらには地下室まである、この素晴らしい家をシェアするということに、とても魅力を感じていたのです。

 

引っ越して1週間後、私たちが部屋で寝ていると、ルームメイトのハンナの悲鳴で目を覚ましました。みんなベッドから飛び起きてハンナの部屋にいくと、彼女はがくがくしながら座りこみ、ベッドの横に立って彼女を見下ろしている黒い男の姿を見た、というのです。彼女が悲鳴を上げると、その男が向きを変え、部屋から出て行った、と、彼女は恐ろさに興奮しながら話していました。

 

私ともう一人のルームメイトの男性は、すぐに家の内や外を確認しましたが、侵入者や誰かが忍び込んできた形跡も見当たりません。この時午前2時か3時頃だったので、私たちはハンナを落ち着かせ、ベッドに戻りました。次の日、私たちはこの出来事について話し合いましたが、このいささか不気味な古い家に住むことに対して神経質になっているのではないか、ということに落ち着きました。(もちろんハンナはその説明を聞いても、ベッドのそばに立っている黒い姿を見たのは間違いない、と言い続け、ついにはこの家を出て行ってしまいました)。

Victoria

この事件から約2週間後、私たちが夜再びみんな眠っていると、突然、大きな音がして、寝室と共用バスルームを隔てていた廊下からガラスの音がしました。私たちが皆飛び上がってホールに駆け込むと、バスルームのドアに取り付けられていた姿見が床一面に砕け散っていました。鏡はドアにしっかりと固定されており、ガラスだけが割れていたので、どうしてこうなったのかわかりません。もちろんアトランタ地震が起きやすい場所ではありませんし、家の前の道路も空いていたので、大型トラックが通った振動で鏡が割れてしまった、ということも考えられません。

 

その後、この同じようなポルターガイストがたびたび出現するようになりました。家で一人でテレビを見ていたとき、暖炉の近くにおいていたロウソクが3本、手で払われたように突然床に落ちたり、身の回りの物がなくなって、ありえない場所から場所から後になって出てくるなどです。(ある時などは、全員で徹底的な捜したら、皆が最初に探したベッドの真ん中に探していた車のキーがおかれていたこともありました)。他にも、誰もいないはずの屋根裏部屋や地下室から、ノックや何かをたたく音が聞こえるのです。

 

そして私たちが引っ越してから約2カ月後に、私たちが「それ」を目撃するという事件が起きました。私たちは家でささやかなパーティーを開いていたのですが、そのパーティーの最中、パーティーの参加者の一人が、誰も会ったことも見たこともない男が、地下室から私たちをじっと見つめていると、突然階下から駆け上がってきて言うのです。

 

彼女はその男に声をかけましたが、彼は何も答えずただスゥっと消えたと。すぐに地下室に行って確認しましたが、もちろん誰もいません。これはとても奇妙なことでした。地下には入り口が一つしかないので、いたずらをしようとしたなら、誰にも見られずに逃げることは不可能だったからです。男を見たパーティーの客も、私たちの家で「何か奇妙なことが起きていることを知らないので、嘘でもからかおうともしたわけではありません。

Victoria view

こんな状況が6カ月ほど続くと、この不思議な現象は沈静化していったようで、誰も「幽霊」に気づいたり見かけたりすることはなくなった。もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら、私たちが皆、この家の古さに感化されて少し敏感になっていたのかもしれないし、もしかしたら、私たちはすこし過剰に想像しすぎていたのかもしれないと、自分自身を納得させ始めました。

 

私たちがこの家に住んでいた頃の終わり頃、ある晩、私は妻とレストランで飲みながら夕食を食べていると、近くのテーブルに座っていた別のカップルと話を始めました。このカップルは私たちが全く知らない人で、その夜偶然に出会ったのです。

 

どこに住んでいるのか、と聞かれたので、アトランタのインマンパークの住所を教えました。「そうですか、私たちも以前インマンパーク近くに住んでいました。あなたはどの通りに住んでいるのですか。」というので、答えると「そう。私たちも同じ通りに家を借りていたんですよ。住所はどこですか。」住所を教えると、すぐに「ああ、まったく同じ家を自分たちで借りていました。」と言い、そのすぐ後に「幽霊をもう見ましたか。」と聞いてくるのです。

 

私も妻も、この全く知らない二人からあの奇妙な出来事についての話を聞いて、びっくりしてしまいました。私たちがこの夫婦とどんなことが起こったかを比較すると、彼らは自分たちが住んでいた時に家で見た多くの奇妙な出来事について話してくれました。それは私たちのものとよく似ていました。