魔女の雫

世界の怖い話を紹介する怪談ブログです。 紹介しているお話は全て実話。眠れない長い夜にでもお楽しみください。またあなたの体験した怖い話を募集しています。投稿はwitch-shizuku@gmail.comまで。

廊下の人影(アメリカ・カリフォルニア)

Shadow

私は小さい頃から、説明がつかないような不可解な出来事に遭遇してきました。例えば、私が5歳の時のこと。2部屋あるアパートに、家族とおじいちゃんと暮らしていました。 いまだに記憶にある出来事の一つ。

 

その当時お父さんはいつもよりも早く仕事があったので、早朝3時ごろに起きていて、お母さんはキッチンでお昼の用意をしていました。私が食器の音に起きてキッチンへ行くと、お母さんは私を見るやいなや「何してるの?まだ早いんだから寝てなさい」と。「眠りたくない、手伝いたかったの」と私が言うと「いいわよ」と微笑みかけてくれました。しかし、靴をはいていなかったのでキッチン近くのカーペットに座りながらお母さんを待っていました。


いい匂いにつられお腹も減ってきた私はカーペットに座りながら「何作ってるの?」と、お母さんと会話をしていたその時、突然誰かに見られているような視線を感じました。振りかえると真っ暗なリビングルームがあるだけ。なにか冷たい空気を体に感じたものの、あまり気にせずお母さんの方へ向きかえりました。

 

それからまた突然、誰かに見られている気配を感じた私はもう一度振りかえてみると、やはり誰もいません。ほんの数分後、わずかな月明りが部屋に差し込み、戸口のそばに誰かが立っているのがおぼろげに見えました。顔も、色もない黒い影。当時幼かった私でも、何か普通ではないものを見ているという実感はありました。こうして当時の話をしている今でもまだ、男の形をした黒いそれがはっきりと見えます。


もしかして夢なのかもしれないと思い、目をこすりもう一度見開くと、黒い男はそこにいたままでした。驚きのあまり立ちすくむ私はそれが一体なんなのか、誰なのか、お父さんかもしれない?と思いましたが、あまりにも服装や体格が違いました。

 

じっと何かを見つめている私に気がついたお母さんが「何しているの?」と。そうこうしているうちに、黒いそれが私の身長に合わせるかのようにひざまずきはじめたのです。

 

「そこの廊下に男の人がいいるよ」と言っても、お昼の準備に気をとられお母さんには聞こえません。するとその黒い男の人が右手を伸ばし、こっちに来るように手招きし始めました。黒くはっきりと見えないはずなのに笑っているようにも見え、えも言えぬ恐怖にさいなまれた私はお母さんに叫びました「この人こっちに来るように言ってるよ、こわいよ!」お母さんは「誰が見てるって?」と。

 

1分も経たないうちに、戸口のそばを見返してみると、もうそこには誰もいなくなっていました。お母さんも見渡すと「ほら、誰もいないじゃない」と言って部屋の明かりをつけます。どうやら、お兄ちゃんが私を脅かそうとでもした、と思っていたみたいです。

 

ちょうど着替えを終えたお父さんに、廊下にいた?とお母さんが尋ねるも、お父さんはいないと答えます。お兄ちゃんもずっと寝ていたようでした。不思議がったお母さんは、「もしかするとおじいちゃんかもしれない」と思い部屋にいってみるも、鍵はかかったまま。もしおじいちゃんが廊下に出てきたとしてもドアを開ける音で聞こえるはず。

 

結局何だったのか理由はわからず、お母さんは私をまた寝かしつけてくれました。その後、この出来事はすっかり忘れ去られていました。

 

しかしその日以来、私は影が見えたり、不可解な音が聞こえるようになりました。今私は24歳になり「ほら、また幽霊話だよ」と言ってあしらわれるので普段は私が見えるもの、聞こえる音のことは誰にも話しません。