魔女の雫

世界の怖い話を紹介する怪談ブログです。 紹介しているお話は全て実話。眠れない長い夜にでもお楽しみください。またあなたの体験した怖い話を募集しています。投稿はwitch-shizuku@gmail.comまで。

不自由(フィリピン)

Cabinet

物事がどうして今のようになったのか、不思議に思ったことはありませんか?なぜ、ある場所を通り過ぎると、このようなゾッとする感覚を覚えるのでしょうか?どうしてして、出会う人によっては、私たちをこのように不快な気持ちにさせるのでしょうか?道端や側道でお金を拾ったことはありますか?それはラッキーですよね!

 

でも、それが誰のものか、そもそもなぜそこに転がっていたのか、不思議に思ったことはありませんか?私は歴史が苦手ですから、過去の悪いことは何もかも置き去って、時間と共に忘れるようにしています。もしも、ある事や物が過去に起きた出来事と結びついていたらどうでしょう?あなたはそれを手放すでしょうか、それとも持っていることに感謝するでしょうか?

 

この話は、私が夏休みを過ごした祖母の家で起きた事です。祖母の家は、室内でも屋外でも楽しめるようになっていて、私はそこで過ごすのが大好きなのです。彼女は、大きなプールに巨大薄型テレビ、テニスやバスケットコート、思いつくことのできる全ての快適な設備を所有しています。だからこそ、彼女がリビングルームに置いていた1980年代風のキャビネットは、どことなく奇妙で場違いな感じがしたのです。

 

なので私は、彼女がどこでキャビネットを手に入れたのか、それは新品だったのかと尋ねてみました。すると、彼女はこんな冗談を言ったのです。「それは80年代のものなんだけど、新品じゃないのかって思うのよ」と。彼女は笑みを浮かべて、2週間前に骨董屋さんの前を通った時に、このキャビネットが目に留まったことを教えてくれました。可愛いくて思わず買ってしまったそうです。

 

私は人生で最高に楽しい時を過ごしましたが、それは、私の2週間の休暇の、まだ3日目のことでした。 夜中に大きなドスンとする音で何度も目を覚ましたものの、すべては順調でした。私はそれが何人かの男性が隣の家で改修工事をしていると知っていたので、特に気にも留めませんでした。彼らは過密なスケジュールで、夜も作業を続けていましたし、何か違う音のように感じても、私は、幽霊が家にいるのではないかと思って、時間を無駄にはしたくありませんでした。

 

ある夜、深夜映画を見ていると、またあの大きな音が聞こえてきました。今度は家の中から聞こえてくるようです。誰かが家に押し入ろうとしているのではないかと心配になった私は、様子を見るため音を辿っていきました。音はリビングからのようです。

 

不思議なことに、その音に近づくにつれて、ドスンという音の後に、何度か金切り声や引っ掻くような音が聞こえてきました。 次に私が目にしたもの、それは今まで見た中で最も恐ろしいものでした。どんな怖い映画や、ハリウッド映画にも及ばない、想像をも絶するものでした。そこには、血まみれの老婦人がいたのです。

 

そして、足音だと思っていた大きな音は、彼女が床を手で叩く音だったのです。さらに、あの引っ掻き音は、彼女が身体を引きずりながら、長い爪で部屋中を引っ掻いて回る音でした。彼女は足が不自由で歩くことができず、体の一部分が変形しているせいか、骨の一部がずれているようにも見えました。 彼女は助けを求めて泣き叫んでいましたが、目はなく、後頭部辺りから発する青く不気味な光だけが、彼女の目の周りを照らしていました。 

 

祖母の部屋よりも近かったので、私は家政婦の部屋に駆け込みました。私は皆を起こして、私が見たことを話したのです。私たちがその場へ戻ってきた時には、床はきれいに掃除されていて、何もありませんでした。翌日、私は祖母を説得して古いキャビネットを返却することにしました。キャビネットを返すにあたり、祖母が前の持ち主は誰なのかと尋ねたところ、それを所有していたのは老婦人であったことが判明しました。ある日、彼女は忽然と姿を消してしまったそうです。

 

誰にも知られずにアメリカに戻ったという説もあれば、残忍な殺され方をしたという説もあり、また、殴り殺されてどこかにこっそり隠されたという説もあります。「でも、実際のところ、彼女がどうなったのかは誰も知らないよ」「証拠も見つかってないし、遺体も発見されていないしね」と業者は言いました。私も祖母も無言のまま、唖然とするだけで、どうしたらいいのか分かりませんでした。私たちは、ただキャビネットをそこに置いて家に帰りました。

 

その老婦人の話で不思議なのは、誰も真相を知るために彼女の事件を調べようとしなかったことです。分かっているのは、彼女の家族が、彼女の私物を売って金儲けをしようとしたということ、ただそれだけです。しかし、最も奇妙な点は、この話を聞いた人たちが、時々その老婦人を見かけると主張することです。彼女は助けを求め、泣き叫び、キャビネットの中でうずくまっているそうなんです… 恐ろしい!