魔女の雫

世界の怖い話を紹介する怪談ブログです。 紹介しているお話は全て実話。眠れない長い夜にでもお楽しみください。またあなたの体験した怖い話を募集しています。投稿はwitch-shizuku@gmail.comまで。

古い幽霊屋敷(アメリカ・ワシントン)

ghosts

 

私たちが築80年を超えた古い家に引っ越してきたのは、5年以上前ことです。その当時、一番下の子は2歳でした。彼は1人でバスルームに行くのを嫌がりました。「黒い目」をそこで見たと言うのです。私たちは、単にトイレの練習をしたくなくてそう言っているのか、この子はきっととても豊かな想像力を持っているんだろうと思い、相手にしていませんでした。その時は、これがこれから私たちの身に降りかかる悪夢の始まりだなんて夢にも思っていなかったのです。

 

まず置いておいたはずのものが無くなるようになりました―ヘアブラシ、鍵、コーヒーが入ったカップなどです。そしてそれらは置いたはずの場所とは別の場所で見つかりました。

 

また、私たちはしばしば何かに見られているようにも感じました。パソコンで作業をしていると肩をたたかれます。子供たちが私に呼ばれたと思って私のところに来て「何?」と聞いてきても、実際には私は呼んでいなかったりすることもありました。私が料理をしながら息子とキッチンで話していると、部屋の向こうの冷蔵庫の上にあるシリアルの箱が飛んできて、窓にぶつかって流しに落ちたこともあったのです。私たちは何も言えず、ただ驚きのあまり目を見開いて、互いに顔を見合わせるばかりでした。

 

それから私は、大きくて真っ黒な何かがバスルームから廊下へ出て、壁を通り抜けて再び戻っていくのを見るようになりました。私の夫は霊を信じていませんが、彼もその黒い影を見たんです。そしてついに子供たちも、黒いものが家の周りを歩いているのを見た、と私たちに話すようになりました。私たちが見たものは子どもには話していなかったのに。

 

ある夜、私たちは訪ねてきた友人と、ゴーストカメラをオンラインで観ていました。その時は、雰囲気を出すために部屋の明かりを消して、真っ暗にしていました。子供たちも私たちの肩越しに、カメラを一緒に観ていました。その時突然、部屋のライトが付いたのです。私は子供たちがやったのだと思い「ねぇ、ライトを消して」と言うと、ライトは消えました。

 

そして私の友達が「あなたの子供たち、可愛いわね」と言ったときに再びライトが付いたのです。子供の一人が「うわぁ、誰がつけたの?」と言うのを聞いたので、私たちが振り向くと、子供たちは私たちのすぐそばにいて、ライトのスイッチの近くにはいないことがわかったのです。動揺した私が恐る恐る「ライトを消してほしいの」というと再び、部屋は真っ暗になったのでした。

 

また別のある夜、私はベッドでテレビを観ていました。夫は仕事をしていてまだ帰っておらず、2人の幼い息子はリビングのソファで眠っていました。娘は外泊していて、2人の年長の息子はリビングでテレビを観ていました。息子が私に「何か聞こえなかった?」と聞いてきました。

 

私は笑いながら「いいえ、怖い映画でも観てるの?」とからかいましたが、彼らが観ていたのは”ファミリーガイ”という、ちっとも怖くないものでした。私は息子に「考えすぎよ」と諭しましたが、数分後にまた深刻な顔をして戻ってきて、私にすぐリビングに来るように言いました。奇妙な音がしたくらいで慌てふためくなんてと、息子に少し腹を立てながら、私も少し怖くなってきました。

 

仕方なくリビングに向い、息子たちが聞いたという「音」を待っている間、気を紛らわせるためにミシンで縫い物を始めました。すると突然、また息子2人が「お母さん!今の聞こえた?」と怯えながら言いましたが、私はミシンを使っていたので何も聞こえませんでした。じっと座って5分待ちましたが、やはり何も起こりません。

 

私が再び縫い始めたところでまた、息子たちが私を止めました。呆れて、少しイライラしながらミシンを止めたその時、2階からとても大きな音がしました。子供たちは今の音が聞こえたかどうか私に何度も聞いてきましたが、私が「猫でしょ」と返すと、息子は床の上で寝ている2匹の猫を指さしたのでした。私が他の論理的な説明を思いつく前に、再び音が鳴りました。それも何度も何度も。

 

それから1時間ほど、2階の木製の床の上を叩くような音、ドスンドスンという低い音、家具が動く音が続いたのです。もはや、「何か」が上の階にいるのは疑いようのない事実でした。階段を上って何が起こっているのかを確かめようとしましたが、正直とても怖くて最初の一歩さえ上がれませんでした。

結局その後その音は止んで、子供たちも眠りに落ちてしまいましたが、私は夫が帰宅した朝6時まで眠れませんでした。

 

帰宅した夫は私に「なんでこんな朝から起きているんだい」と聞いてきたのですが、私は「眠れなかったの」とだけ答えました。彼はこの前に黒い「何か」を目撃した後でさえ、心霊現象とか幽霊だとかをまるで信じない人でしたから、夜に起きたことを話すのを躊躇してしまったのです。でも彼は、私が普段と違うのを察し、何があったのかをしつこく聞いてくるので、やむなく全てを打ち明けました。

 

彼は笑いながら階段を上っていったので、私はそのすぐ後ろをついていきました。最後の段の前で、彼は急に立ち止まりました。私が恐る恐る彼の肩越しに覗くと、そこにはめちゃくちゃに破壊された長男の部屋があったのです。ベッドのスプリングは外れて、マットレスは壁に寄りかかっていました。ドレッサーは部屋の真ん中にあり、その上にテレビが置かれ、おもちゃ、本、紙、衣類が部屋中に散らばっていました。

 

私はこの出来事を友達に話しました。彼女は、家を清めるためにホワイトセージを使うよう勧めてくれました。ホワイトセージはハーブの一種で、空間を浄化する神聖な力をもつとされているそうです。また、幽霊についてインターネットで沢山調べ、デジタルカメラで2階の暗いところで怪しいと感じるところ、また寒気を感じるところを無我夢中で写真に収めました。1階にある暖炉も不気味な感じがしていたので、暖炉の写真も撮りました。デジタルカメラの画面で見る限りは、何も映っていませんでしたが、とにかくそれらの写真をアップロードしました。

 

すると、その写真には至る所で小さな水滴の様な光球のオーブと呼ばれるものがうつっていたのです。2階の廊下のある場所では、まるで銀河のような膨大な数のオーブ、そして階段の下では赤い謎の塊。極めつけには、暖炉の写真にバスローブを着た白人女性らしきものが写っていました。彼女は真っ白な姿をしていました。私はきっと信じてもらえないだろうと思い、これらの写真を信頼できる家族と一部の友人だけに見てもらいました。写真を見た全員が、「これは間違いなく女の人だ」と言いました。

 

その後、私たちは友人に言われた通りホワイトセージを手に入れて、家中、外も中も至る所で燃やしました。一段落してから、私は隣人から、この家は私たちの前になんと悪魔崇拝者が借りていた場所であったことを聞きました。その隣人が言うには、この家からはとても奇妙な音が聞こえていたそうです。悪魔崇拝者が追い出された後、その隣人と彼女の夫はこの家を訪ねたときは、オーナーがその家を掃除しており、すべての壁に悪魔のような落書きが吹き付けられているのを見て、恐れおののいていたそうです。

 

そして、私たちがホワイトセージを燃やした数か月後、ふたたび「それ」は始まりました。ある夜、娘が助けてと大声を上げました。私たちが駆け付けると、娘の新しいテレビのチャンネルが勝手に変わっていました。娘がリモコンの上に座っているんじゃないかと思いましたが、リモコンはナイトスタンドの上にあったのです。リモコンから電池を取り出しても、テレビのチャンネルは変わり続けました。

 

次の日には、年長の息子たちが騒ぎ始めました。彼らのテレビの全てのチャンネルがフランス語の音声に変わっていたのです。私たちは衛星放送を持っておらず、フランス語圏に住んでもいませんし、フランス語圏のチャンネルも存在しません。もう何が何だかわからぬまま、ただただ、テレビを消すしかありませんでした。

 

 それからこんなこともありました。誰もいないのにバスタブに水が入り始め、トイレも勝手に水が流れたりしました。セルフクリーニングのオーブンも、リビングでテレビを観ている時に勝手に作動し始めました。私たちがキッチンに足を踏み入れると、オーブンのレバーが非常に速く前後に動きながら、デジタルの表示盤の数字が猛烈な速さで文字、記号へと変わっていき、私たちは黙ってそれを5分ほど見守ることしかできませんでした。

 

子供たちはとても怯えていたので、私がどうにかしなければならないと思い、とても厳しい口調で「いい加減にしなさい!!」と叫びました。すると、オーブンはすぐに止まり、オーブンの扉が床に落ちました。扉を調べてみると、金属製の半円型のヒンジが切り取られていたのです。

 

そういう事件が続く中で、私はその幽霊と話してみようとしました。何故かは分かりませんが、幽霊はどうもこの家で育ち、家を受け継いだおばあさんのような気がしたのです。初めのころ私たちが見た「黒いもの」はまた別で、それが誰なのかは分かりません。とにかく、私は彼らに向けて「これがあなたたちのやりたいことなら好きにすればいいけど、もう私たちの家族を怖がらせないで。向こう側の世界にいけば、もっと幸せになれるわよ」と言いました。でもその内に、1人でこんなことをしているのが馬鹿らしくなって止めて、気分がとても深く深く沈み始めました。

 

この時から、私は3か月もの間ひどい鬱状態に置かれました。私はただただ絶望していたのです。私の人生も、家族も、すべてが素晴らしくて、悲しむ理由なんてどこにもないのに。家を出た時だけは、気分がとてもよくなりました。週末に出かけた時も、家に戻るまでは気分はよかったのです。私はこの家が大好きなので、自分が家のことでこれだけ落ち込んでいるこの状況をとても受け入れられませんでした。

 

しかし、家ではなく「幽霊」に対して悲しみを感じているのかもしれない、と思い直した時から、私の気分は少しずつ良くなっていったのです。そんな中、再び子供たちは「黒いもの」を見るようになりました。彼らは玄関、リビング、キッチン、バスルーム、廊下が好きなようで、幽霊を全く信じていない私の娘も黒いものがベッドの足元に立っているのを見たそうです。

 

 そんな時でも、私たちの家には沢山の来客があったのですが、彼らも「この家は何かおかしい」と口にするようになりました。私たちは家族以外に、この家で何が起きていることを全く話していなかったので、彼らにはここが幽霊屋敷だという先入観がないはずなのに。娘の友達は1週間程我が家に泊まったことがありましたが、彼女も「リビングの中に何か凍えるように寒い所がある」と言っていました。

 

実際私もその場所に椅子をもってきて座ってみると、背中がとても冷たくなりました。息子と、娘の友達が私の背中に触れると、氷のように冷えていたそうです。もちろん、彼女は私たちの家で起きていることについて何も知りませんでした。彼女はまた、以前にこの家のお風呂に入ったときに、何かが忍び寄り、自分を監視しているように感じたとも言いました。彼女はすぐに石鹸を洗い流してバスルームから出たそうです。続けて私は、この家でおかしいと感じた場所が他にないか尋ねると、彼女は例の白い女性が写りこんだ暖炉をゆび指したのでした。

 

他にも、私だけに起きたこともあります。4か月ほど前から、目が覚めると、私の腕、足、背中、顔にとても深いひっかき傷が残っていることがあったのです。それはたいてい、3つに分かれており、特に真ん中の傷が最も深く残っていました。もちろん私の爪は伸びていませんし、ベッド周りにそういう傷がつけられるものもありません。そして現在はもういない、私たちの家の猫の仕業でもありません。今は犬を飼っているのですが、その犬はいつも息子の部屋で寝ています。その犬も時々立ち止まっては唸るんです、何もないところに向かって。

 

 私が、例のホワイトセージを燃やして空間を清めたから「それら」に憎まれているのか、それとも私が怖がっていないことに業を煮やしているのか―。いずれにせよ、なぜ私が引っかかれたのかは分かりません。もう一度ホワイトセージを試す気にもなれません。再び彼らを怒らせて、もっと恐ろしいことをされるのはかなわないからです。私の母は、私たち家族に、ここから引っ越すようにといいますが、引っ越すことで「彼ら」から逃げられるのかも分かりません。もしすべてが落ち着いたら、ここで再びまた皆さんに報告したいと思います。

 

このお話を信じるかどうかはあなた次第ですが、ここに書いていることは全て、私のアメリカのワシントン州にある自宅で実際に起こったことです。こうして私の話しを知ることによって、読者の皆様方の身に万が一にも不吉なことが起きることのないようお祈りしています。